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牛と気候変動の関係(牛の研究者の視点から)

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以前の投稿で「お肉の量を減らす」ことで、気候変動を抑えることができる可能性についてお話しました。

www.tsunageru.work

今回、興味深いポッドキャストを聞いたのでその内容をシェアしたいと思います。

こちらのポッドキャストのゲストのカリフォルニア大学デービス校のMitloehner教授によると、お肉の量を減らしても気候変動の抑制はあんまり期待できないんじゃないかという内容でした。

私が聞いていたことと真逆の内容だったので衝撃的でした!

ポッドキャストの内容と私の考えについて書いていこうと思います。

英語なのですが、ご興味があればぜひ聞いてみてください。

sustainabledish.com

 

 

ポッドキャストに出演していたMitloehner教授について

Frank Mitloehner

(出典:UC Davis ウェブサイト

ポッドキャストのゲストはカリフォルニア大学デービス校のFrank Mitloehner教授は畜産学に所属しています。

メインの研究テーマは、家畜生産における大気環境調査、環境生理学です。

 

温室効果ガスについてもう一度おさらい

主な温室効果ガスは以下の3つがよくあげられます。

二酸化炭素:メタンや一酸化二窒素よりも温室効果は少ないですが、大気中に排出されたら、何千年も大気中に残り続けます

メタン:牛や羊などの家畜、水田から発生します。水田からもメタンガスが発生してるというのは意外に思われた方も多いかと思います。メタンには二酸化炭素の28倍の温室効果があると言われています。排出されて12年大気中に残り続けます。

一酸化二窒素穀物を育てるために使う窒素肥料から一酸化二窒素が発生します。二酸化炭素の約300倍の温室効果があります。

こんな記事も見つけたので参考までに。

www.naro.affrc.go.jp

 

Mitloehner教授の主張としては、畜産から排出されるメタンガスは二酸化炭素の28倍の温室効果があるという点ばかり叩かれるが、大気への残留性を考えると二酸化炭素のほうが温室効果ガスとしては悪いんじゃないかということでした。

 

牛や羊が気候変動の主要な原因じゃない?

今でも論文などで引用されているFAO 2006年の報告で、地球全体の温室効果ガスの排出の18%は畜産業からと書かれています。

そして、この量は飛行機、自動車などの交通からの排出よりも大きいとされていました。(かなり衝撃的な発表で、今でもこの数字が根拠となって畜産業に反対する気候変動の活動家の人たちがかなりいます)

でも、これは間違っている!というのが教授の意見です。畜産業と交通それぞれの計算方法が違うので正しい比較じゃないとのことです。

  • 畜産から温室効果ガスの排出量の計算は、家畜に与えられる穀物を育てるところから家畜が食べて排出するまでのライフサイクルで計算されています
  • 一方で、交通は飛行機が飛んでいる時、自動車が走っている時の二酸化炭素の排出量しか考慮されていないんです。自動車の生産段階での排出量は考慮されていません。つまり、ライフサイクルでの計算にはなっていません。

 

家畜の数ってどんどん増えてるの?

ポッドキャストの中で、アメリカでは乳牛一頭あたりの牛乳の収量が増えたために、飼育頭数が減ったと言っています。これは、かなり温室効果ガス削減に効果があるそうです。

50年代と比べて、現在60%も多くの量の牛乳が一頭からとれるそうです。

 

個人的にアメリカの牛全体の飼育数を調べてみたのですが、こちらもピークの70年代から減少傾向にあるみたいです。

アメリカの牛の数の推移

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(出典:USDAウェブサイト

 

以下は、日本の乳用牛の数の推移ですが、こちらも減少傾向にありますね。

日本の乳用牛の数の推移

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(出典:農林水産省 畜産統計調査

 

「お肉をやめれば気候変動が抑制される」の真実

牛肉を食べる人が増えれば増えるほど穀物を育てるためのエネルギーや水、土地がもっと必要になるので、気候変動対策のためにお肉の消費を減らしたほうがいいという意見があります。

これに対し、Mitloehner教授は、アメリカの家畜は生涯ほとんどの間牧草を食べて育っていると言っています。

屠殺の4か月前からとうもろこしなどの穀物を食べさせることが多いそうです。

少しの期間穀物を食べさせることで、飼育の期間が牧草だけの場合より2分の1も短くなり、これは牧草だけの場合より、穀物を食べさせたほうが、飼育期間が短いので必要な食べ物の量、水の量、糞の量などかなり少なくてすむそうです。

でも、穀物を生産、運搬する時に温室効果ガスが発生するので、一概にどちらのほうが環境にいいとは言えなさそうです。

日本の牛たちも同じようにほとんどの期間を牧草で育っているんでしょうか。ご存じの方がいらっしゃったら教えてください。

 

色々と調べていると以下のグラフをネット上で見つけました。屠殺前にとうもろこしを食べさせた牛と、牧草だけで育てた牛の温室効果ガスの排出量を比較したものです。

牧草だけのほうが排出量が多いんですね。

でも、これにはとうもろこしを生産するときの温室効果ガスの排出は考慮されていないんじゃないかなと思います。。。

(出典:Understanding Modern Agriculture: The carbon footprint of beef

 

さらに、穀物を食べる牛でも一生の80%は人間が食べられない草を食べて育ちます。それがお肉として人間が食べられる状態になる点で、人間が食べられる穀物だけを食べて育つ豚や鳥に比べたら環境にいいのではないかという主張をしています。

 

ベジタリアンも家畜に頼ってる?

ベジタリアンの人の多くは、健康志向でオーガニック野菜を買う人が多いと言われています。

実はオーガニック野菜を育てるためには、「有機肥料」が必要で、これは家畜のフンなんです。

だから、家畜がいないとオーガニック野菜が育たないんです。

家畜の生産に反対しつつも、家畜に頼っている野菜を食べていることは何か矛盾があるのではと主張されていました。

 

私の個人的な意見

今まで、畜産業をネガティブな視点で見ている情報ばかり目にしていたので、新しい視点でおもしろいなあと思いました。

畜産業が気候変動に対してどのくらい影響を及ぼしているのかはっきりとしたデータがないのは残念です。

それに、Mitloehner教授がいうように私もオーガニック野菜を好んで買っていて、これも牛のフンのおかげなんですもんね。。。

なかなか複雑な問題だと思います。

ただ、牛からの牛乳の収量を増やすためにナチュラルじゃないことをきっとしているだろうし、家畜用穀物の遺伝子組み換えもあるだろうし、気候変動以外の問題についてももっと知る必要があるなあと思いました。

また、動物の倫理とか権利とかの問題も関わってくるので、畜産業って色々と議論する観点がある分野だなあと、一消費者としてこれからも色々と考えていこうと思いました。

 

最後までお読みくださいましてありがとうございました!